R8 労基2-ア|労働条件の相違と即時解除
問題
労働者は、民法第95条により、労働契約の締結に際し、「錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであるとき」は、当該契約を取り消すことができるが、労働基準法第15条によれば、そのような場合に該当しないときであっても、単に明示された労働条件と事実が相違することのみをもって即時に労働契約を解除することができる。
この肢は正しいでしょうか、誤りでしょうか。
判定
解説
明示された労働条件と実際の条件が違えば、労働者は労基法15条2項により直ちに労働契約を解除できます。民法95条の錯誤取消しに必要な「重要な錯誤」に当たるかどうかは、この即時解除の要件ではありません。したがって、肢アは正しいです。
民法95条は、契約を結ぶ際の意思表示に重要な錯誤があった場合に、その意思表示を取り消せるという一般ルールです。これに対し労基法15条は、使用者が労働条件を明示することを求め、その明示内容と事実が相違するときには、労働者に特別な救済として即時解除を認めています。
労働条件の明示と相違時の解除については、一般法である民法95条の要件ではなく、特別法である労基法15条2項が優先して適用されます。そのため、重要な錯誤があることまで必要としません。もっとも、これは民法の定めが全面的に適用されなくなるという意味ではなく、労基法が定めていない事項には民法が補充的に関わります。
例えば、採用時に「基本給は月額30万円、転勤なし」と書面で明示されたのに、就業開始後に「基本給は月額25万円で、転勤もある」と示された場合を考えます。この相違が民法95条のいう重要な錯誤に当たるかを検討しなくても、明示された労働条件と事実の相違があれば、労働者は労基法15条2項により即時に解除できます。
転勤:なし
転勤:あり
明示された条件と事実が相違するとき、即時に解除できます。
根拠
- 労働基準法15条(e-Gov法令検索):明示された労働条件と事実が相違するときの即時解除を定めています。
- 民法95条(e-Gov法令検索):錯誤に基づく意思表示の取消しの要件を定めています。
復習ポイント
- 労基法15条1項は、使用者に労働条件の明示を求めます。
- 明示内容と事実が相違すれば、労働者は即時に解除できます。
- 民法95条の錯誤取消しと、労基法15条2項の即時解除は要件と効果を分けて確認します。
解き直し
労働者は、民法第95条により、労働契約の締結に際し、「錯誤が法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものであるとき」は、当該契約を取り消すことができるが、労働基準法第15条によれば、そのような場合に該当しないときであっても、単に明示された労働条件と事実が相違することのみをもって即時に労働契約を解除することができる。
もう一度、正しい・誤りを選んでください。
判定:正しいです。
この場面では特別法である労基法15条2項が優先し、明示された条件と事実が相違すれば直ちに解除できます。民法95条の重要な錯誤に当たることは要件ではありません。