R8 労基2-イ|損害賠償額の予定と不法行為
問題
労働基準法第16条の禁止する損害賠償額の予定は、労働契約の不履行に伴う損害賠償に限られ、不法行為の場合における損害賠償は含まれないと解される。
この肢は正しいでしょうか、誤りでしょうか。
判定
誤りです。問2全体の正答は、他の肢の判定をそろえてから確認します。
解説
労基法16条は、労働契約の不履行だけでなく、労働者の不法行為について賠償額をあらかじめ定めることも禁止します。したがって、「不法行為の場合は含まれない」とする肢イは誤りです。
ここでいう「損害賠償額の予定」とは、実際の損害額を確かめる前に、一定の出来事があれば一定額を支払わせると決めておくことです。例えば、退職や備品の破損について「必ず10万円を支払う」とあらかじめ約束させることは、労働者を不当に拘束するおそれがあるため認められません。不法行為による損害についても、このような予定はできません。
もっとも、労基法16条が禁止するのはあらかじめ金額を固定することであって、現実に生じた損害の賠償請求そのものではありません。労働者の故意・過失、不法行為と損害との因果関係、損害額などを個別に検討した結果、実損害について請求できる場合はあります。この「予定の禁止」と「実損害の請求があり得ること」を分けて押さえます。
あらかじめ定額を約束債務不履行・不法行為があれば、一律10万円を払う。
現実に損害が発生故意・過失、因果関係、実際の損害額を個別に確認する。
労基法16条が禁止するのは左の「予定」です
不法行為の場合も定額の予定は不可。実損害の請求可否は別途判断します。
例えば、会社の車を運転中に労働者が不注意で損傷させた場合を考えます。就業規則に「社用車を損傷した者は一律10万円を支払う」と書いておくことは、損害賠償額の予定として禁止されます。一方で、実際に損害が生じたときは、その労働者の故意・過失や損害の内容を踏まえて、実損害の賠償責任が生じるかを別に判断します。
就業規則の定め「社用車を損傷したら一律10万円」
実際に起きたこと運転中の不注意で社用車が損傷
定額を先に決めておくか、発生した損害を個別に確かめるかを区別します
一律10万円の定め不法行為の場合でも、賠償額の予定として禁止されます。
実損害の検討故意・過失、因果関係、損害額を踏まえて判断します。
労基法16条は実損害の請求自体を禁止する規定ではありません
「不法行為は含まれない」ではなく、「不法行為でも定額の予定はできない」が結論です。
根拠
- 労働基準法16条(e-Gov法令検索):労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約を禁止しています。
- 労働問題に関するQ&A(大阪府):労働者の債務不履行又は不法行為について、あらかじめ金額を予定して支払義務を負わせることを禁止する旨を説明しています。
- 就業規則作成のポイント(厚生労働省):不法行為による実損害の賠償責任と、労基法16条による賠償予定の禁止を区別して解説しています。
復習ポイント
- 労基法16条は、違約金と損害賠償額の予定を禁止します。
- 損害賠償額の予定には、不法行為による損害についての定額の約束も含まれます。
- 現実の損害について賠償請求できるかは、予定の禁止とは別に判断します。
解き直し
労働基準法第16条の禁止する損害賠償額の予定は、労働契約の不履行に伴う損害賠償に限られ、不法行為の場合における損害賠償は含まれないと解される。
もう一度、正しい・誤りを選んでください。
判定:誤りです。
不法行為の場合についても、あらかじめ賠償額を定めることは労基法16条で禁止されます。実際に生じた損害の請求可否は別に判断します。